前年度に開発したウサギIL-1の天然型抑制因子であるIL-1receptor antagaonist(IL-1ra)の遺伝子組換体とこれに対するポリクロンおよびモノクロン抗体、および抗ウサギTNFαモノクロン抗体を用いて、炎症導入期に重要だと考えられる2種のサイトカインの制御による炎症反応の制御を試みた。まず、細菌性関節炎のモデルとしてエンドトキシン(LPS)関節炎を対象にすると、その白血球浸潤は全期間にわたって約70%以上の抑制が、TNFαまたはIL-1raいずれによっても認められること、さらにこの両者を組み合わせた場合には90%以上の抑制がみられることが判明した。またこの炎症の軟骨破壊現象はこれらいずれの抑制物質によっても完全に抑制できた。また、好中球枯渇ウサギでは軟骨破壊はLPS注射によっては認められず、TNFαの産生量には変化がないが、IL-1の産生は完全に消失した。一方、炎症の場に検出される量のIL-1を注射しても関節軟骨の破壊は起こらないので、この炎症の組織破壊はサイトカインの直接作用ではなく、これによって誘導された好中球浸潤によって間接的に起こることが証明された。事実、分離した炎症慘出好中球を直接関節腔内に注射した場合に関節軟骨の破壊が再現できる。またLPSまたは好中球の直接注射による関節軟骨の破壊は好中球エラスターゼの阻害剤によって完全に阻止できるので、浸潤好中球から遊離されるエラスターゼがその主役であることが証明された。また、類似の結果は尿酸結紮、ブドウ球菌死菌で起こした炎症についても認められるので、この2種のサイトカインは一般的に急性炎症における導入期のサイトカインとして重要な役割を果たしていることが明らかになり、炎症の治療の基礎的な方向性を明らかにできた。しかし、ブドウ球菌生菌を用いた炎症ではこのいずれによっても抑制は軽度にしか見られず、実際の炎症においてはさらに複雑なメカニズムが関与していると考える。
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