研究概要 |
1.肝類洞内皮特異的抗体の作製 種々の肝病変における類洞相皮細胞の変化を明らかにする目的で、類洞内皮細胞特異的抗体の作製を試みた。エルトリエーターにより遠心分離したラット類洞内皮細胞を、マウスに免疫することによって単クローン抗体SE-1を得た。この抗体は肝で類洞皮内とのみ反応、門脈,肝動脈,肝静脈の内皮とは反応しなかった。さらには各臓器の血管内皮についても検索した結果、SE-1は肝類洞内皮のみを特異的に認識することが明らかとなった。免疫電顕法による検索により、SE-1抗原は類洞内皮の細胞膜に局在し、またpinocytotic vesicleの内腔側にも認められた。以上からSE-1抗原は、類洞内皮の特異的機能に関連すること、また受容体分子であることが推測される。さらにSDS-PAGEによる解析から、この分子の分子量は約45Kdであることが示された。 2.肝がん組織における血管内皮細胞の変化 がん化の過程では腫瘍結果の新生が起こることが知られている。しかし、腫瘍結果と既存の血管との機能的差異についてはほとんど明らかにされていない。そこで実験肝発がん過程で出現する肝病変の血管内皮の変化について、SE-1を用いて検索した。その結果、前がん病変の内皮ではSE-1の発現の減少がみられ、さらに大部分の肝がん組織の血管内皮ではSE-1の発現が消失していた。肝がん組織の血管では、類洞内皮では認められない基底膜構造が出現することから、コラーゲンtypeIII,フアイブロネクチン,ラミニンの抗体を用いて基質の発現変化とSE-1の消失との関連を検討した。その結果、いずれの基質成分もがん組織での異常発現は認めず、これらとSE-1の消失との直接的関連ははっきりしなかった。現在、他の基質成分についても検索中である。
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