研究概要 |
一部の悪性神経膠腫に上皮増殖因子受容体(Epidermal Growth Factor Receptor,EGFR)の構造異常(EGFR遺伝子の増幅、Exon1〜8の再構成とExon2〜7の欠失、異常なEGFRmRNAの発現)があることが知られている。本研究は、異常EGFRmRNAの発現を直接抑制することにより、悪性神経膠腫の増殖を阻害する遺伝子治療モデルの作製・解析を目的としている。 本年度は異常なEGFRmRNAを特異的に認識し分解するように設計したribozymeを用い、主としてin vitroで「遺伝子治療実験」を行なった。正常型EGFRmRNAと異常型EGFRmRNA部分をコードする塩基配列をT7ブロモーターの下流につないだDNAをPCRにより作製する。このDNAを鋳型としin vitroで転写を行い標識基質を合成した。この合成基質部分を認識するハンマーヘッド型ribozyme構造を含むDNAをPCRにより作製し、in vitro転写を行い標識ribozymeを合成した。合成した基質RNAとribozymeをin vitroで反応させ、基質RNAの分解産物を電気泳動により同定した。その結果、我々の合成したribozymeはin vitroで異常型の合成EGFRmRNA基質を比較的生体細胞内環境に近い条件で分解できることが確認され、ribozymeによる異常EGFRmRNAの発現制御が有望であることが示唆された。 今後は、ヒト脳腫瘍から精製されたEGFRmRNAのribozymeによる分解をin vitroで行い、その分解産物をノーザンブロット法で検討する。さらに、適当なvectorを利用することにより異常型EGFR遺伝子構造を有するヒト悪性神経膠腫Xenograft株にribozymeを遺伝子導入し、in vivoでのribozymeの効果を検討する予定である。
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