研究概要 |
慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、半月体形成腎炎(CRGN)などの自己免疫疾患において、最近、正常時はほとんど血中に認められない好中球の顆粒酵素のMPOが自己抗原となり抗MPO自己抗体(ANCA)が血中に増加することが問題となっている。これらの疾患において、血中MPO活性と抗MPO抗体との相関関係についてわれわれはすでに報告してしてきている。特に、病初期の血中MPO活性は高値を示し、急性炎症像に類似している。自己免疫疾患の発症機序を明らかにするために、自己抗原となるMPOの蛋白質、活性とその抗MPO自己抗体の3者の測定系を確率する必要があった。一方、正常好中球のMPOにはI,II,IIIの3つのタイプがあることが知られている。われわれはすでに、これらMPOに対するモノクロナール抗体を作成し、これを利用したMPOの活性測定法に加えて、サンドイッチ法による不活性型MPO測定を同時に測定する方法を検討し、これらの方法を確立することおよび好中球を活性化する免疫複合体に結合しているMPO分子の性状を明かにした。血清中の自己MPO抗原のたんぱく質、活性とその抗体の産生との関係について明らかにした。1.MPOのタイプI,IIおよびIIIをHigh performance electrophoresis chromatography(HPEC)にかけ、溶出したピークの活性測定によりMPOタイプを同定した。2.MPOを電気泳動後、予研で開発した活性染色法およびモノクローナル抗体のイムノブロットによりMPOを検出した。また、3.基質として3,3',5,5'-テトラメチルベンジジンを用い、マルチウェル用オートマティックアナライザーで655nmにおける吸光度の増加率より定量した。4.MPO-IIIをコートし、患者血清を反応させELISA法により測定した。本年度はウエスタンブロットも含め、これらの方法を用いての半月体形成腎炎の患者血清中のMPO自己抗体のMPOの反応部位を特定した。ほどんどの抗MPO血清はMPOの59kDaの長鎖と反応した。また、MPOの長鎖には糖鎖が存在していることから、Endoglycosidase-Hで糖を切断したところ抗MPO血清は強く反応した。これらのことから、抗MPO血清はMPOの59kDaの長鎖の糖結合箇所付近が反応部位と推定された。
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