BALB/cヌードマウスの腎皮膜下に異種であるF344ラットの胎仔胸腺を移植しておくと同マウスの免疫能が獲得される(TGヌード)。しかしながら、TGヌードの肝臓や腎臓には異常が認められないが、甲状腺、涙腺や唾液腺等約10の臓器に炎症反応の多発がみられる。シェーグレン症候群類似の涙腺や唾液腺の炎症は組織全体にわたりリンパ球湿潤があり、特に涙腺においては腺の完全な萎縮を伴う。これらの病変は胸腺の移植後1か月から慢性の経過をとる病変として90%以上のマウスに認められるようになる。多数のTGヌードマウスにおいては涙腺が機能を失うことから角膜が乾燥状態となる。この角膜の組織は上皮細胞の増生や角質化が認められるとともに、間質にリンパ球の湿潤を認める。そして上皮細胞の直下や間質に補体やイムノグロブリの沈着を認める。これらの病変の発症に伴い、血中には正常マウスの涙腺や唾液腺の腺房や導管と特異的に反応するIgG抗体が蛍光抗体間接法により検出できた。さらに興味あることには角膜の上皮細胞や間質と反応する抗体も検出できた。多数のTGヌードマウスの検索の結果、角膜炎が涙腺炎の発症なしにでも生じる例があることから、角膜炎は独立した病変である可能生が高い。これらの病変は同病変を発症しているTGヌードの脾リンパ球でもって無処置ヌードマウスに高率にトランスファーすることができた。そして有効な細胞はL3T4陽性のTリンパ球であることを明らかにした。またTGヌードマウスに発症した病変は抗L3T4抗体を投与することにより治療することができた。
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