研究概要 |
ネズミ糞線虫をマウスに感染させた場合、成虫に対する腸管での防御には、腸管粘膜肥満細胞(MMC)が深く関与する。マウスにIL-3を反復投与すると、腸管MMCが顕著に増加し、糞線虫に対する防御を誘導できることから、外因性のIL-3の効果は明確であるが、感染において内因性IL-3がどの程度関与するかは、不明であった。糞線虫感染マウスの腸管膜リンパ節、脾臓、腸管のRNAを抽出し、RT-OCRを用いて、IL-3,IL-4,stem ceii factor (SCF)のmRNAを検出した。IL-3mRNAは、感染7日目の腸管膜リンパ節に検出され、感染11日目にはすみやかに減少した。用いた実験条件では、正常組織、感染脾臓、感染小腸にはIL-3mRNAを検出できなかった。IL-4mRNAは、正常腸管膜リンパ節にわずかに検出され、感染7日目にはピークに達し、正常の7倍に増加した。それは、脾臓では感染11日目がピークであり、小腸では感染7日目がピークであった。SCF mRNAは、正常組織にも比較的強く検出され、腸管膜リンパ節では感染により増加する傾向が見られたが、脾臓、小腸では感染により減少する傾向があった。このように、糞線虫感染における局所のサイトカイン産生は必ずしもIL-3だけが主要なものではなく、IL-4やSCFなどの、in vitroで肥満細胞の分化増殖に関与する他のサイトカインも、深く関与する可能性が示唆された。いっぽう、電子顕微鏡レベルの観察により、糞線虫感染マウスの腸管MMCは、虫体の排除時期に一致して、特徴的な顆粒の結晶化構造を示した。しかし、ヒト結合組織肥満細胞で見られるような、アナフィラキシ-型の脱顆粒像は検出されなかった。糞線虫感染で観察されるものと同様の顆粒変化が、IL-3の連続投与によっても観察され、IL-3により糞線虫感染と同様のMMCの活性化が誘導できることが示された。
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