研究概要 |
ネズミマラリアの一種Plasmodium bergheiをモデルとして、マウスから蚊へのマラリア伝播に際して重要な役割を果しているオオキネート表面の一分子(以下Pbs21と略す)をとらえ、組み換え蛋白をつくってマラリア伝播阻止ワクチンとしての有用性を検討した。 結果として、 1.Pbs21の遺伝子を、バキュロウイルスに組み込んでカイコの培養細胞に感染させ、組み換え蛋白Pbs21(rPbs21)を得ることに成功した。 2.この蛋白はマラリア原虫由来のPbs21(nPbs21)と相同の分子量であった(21kD)。つぎに、nPbs21に反応する3種のモノクローナル抗体(mAB)を使ってrPbs21とnPbs21に対する反応性を検討した。両蛋白(rPbs21、nPbs21)を還元すると2つのmAbに対する反応性が失われたが、1つのmAbでは、両蛋白の還元・非還元ともに反応性を認めた。すなわち両蛋白は三次構造の相同性が高いことが示された。 3.Pbs21の遺伝子を組み込んだバキュロウイルスを直接カイコに注射し、カイコの体液および脂肪体の双方より、培養細胞系で得たrPbs21と同様に組み換え蛋白を得た。 4.nPbs21に対するmAbを結合させたアフィニティーカラムを利用して、カイコの体液中よりrPbs21を精製した。カイコ幼虫1匹分の体液より約50ugのrPbs21が得られた。 5.精製したrPbs21をマウスに免疫して、マウス血清中の抗Pbs21抗体を追跡した。2回の免疫注射で、50ug IgG/ml以上の特異的抗rPbs21抗体が得られていることをELISAにより確認した。またwestern blotting法により,nPbs21と反応する特異抗体も得られていることを確認した。 6.抗体価の上昇したマウスにP.berghei 5x10^6ヶを腹腔注射し、3日後にハマダラカに吸血させた。吸血後12日後にハマダラカを解剖し、中腸に形成されたオオシストの数をかぞえ、対照と比較したところrPbs21で免疫されたマウスを吸血した蚊の中腸にはほとんどoocystの形成をみとめなかった。 以上より、バキュロウイルス系により産生された組み換え蛋白は、免疫源として有用であることが認められた。
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