研究概要 |
1.マラリア感染に伴うヘルパーT細胞サブセットの応答についてサイトカインの産生を指標として調べ、マウスにおけるPlasmodium yoelii 17X感染では、IFN-γ応答は弱毒株感染のみならず強毒株感染にも認められること、IL-10応答は強毒株感染にのみ認められることなどを明らかにした。これらは、感染初期のTh2応答がマラリアにおける憎悪、致死性に関与することを初めて示唆する結果であった。 2.Th1,Th2由来サイトカイン応答をさらに詳細に検討するため、本原虫の強毒株(PyL)をC57BL/6マウスに接種後、経日的に採取した脾細胞のサイトカイン応答を調べた。その結果、強毒株感染後のTh1応答(IFN-γ産生を指標として)とTh2応答(IL-10産生を指標として)のpeakの時期に差は認められないこと、即ち、他の原虫感染などに認められるTh1-Th2のcross-regulationとは異なる応答と経過を、宿主が本原虫感染に対してとることが明らかとなった。IL-2、IL-4およびIL-5応答については、いずれもこの系では、有意な産生は認められず、これら2つのサイトカインが主要なものであると考えられた。 3.抗IFN-γ抗体投与と抗IL-10抗体投与の感染経過に及ぼす影響について検討したところ、抗IFN-γ抗体投与によってマウスの死亡開始日が早まり、また、抗IL-10抗体投与によって半数以上のマウスが治癒した。さらに、脾細胞によるin vitro NO産生は、抗IFN-γ抗体により抑制され抗IL-10抗体により増大した。 以上の結果より、本原虫感染では、Th1サイトカインであるIFN-γが防御に、Th2サイトカインであるIL-10が憎悪に関与すると考えられた。さらに、P. bergheiの弱毒株感染においてもこれらのサイトカインの拮抗的役割が明らかとなった。
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