これまでに得られているp30をコードするcDNAは5′末端が不完全であったので、まず完全長のcDNAのクローニングを試みた。その結果、5′末端が45塩基長い2つのcDNAクローンが得られた。2つのcDNAの塩基配列には数塩基の違いが認められた。また、3′末端側に数塩基の欠落があり、その結果停止コドンの位置が3′側にずれているものが見つかるなど、p30に関してコードするアミノ酸がわずかに異なる複数の遺伝子の存在が明らかになった。 また、一方でモノクローナル抗体を用いたアフィニティーカラムを作製し、虫体からp30を精製した。非還元状態では、p30の大部分はオリゴマーとして存在していることが明らかになった。精製したp30に関しては、エドマン分解によってN末端アミノ酸残基の配列決定を試みたが、N末端がブロックされていると考えられた。そこで、アセチル基およびホルミル基のデブロッキング処理を行ったが効果がなく、それ以外の保護基が存在するものと思われる。精製したp30についてアミノ酸分析を行ったところ、cDNAより予想されたアミノ酸組成に近いものであった。さらに、このp30をELISA抗原としてアメーバ症患者血清中の抗体検出を試みたところ、高い特異性と感度が得られ、p30を診断用抗原として利用することの有用性が示された。
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