研究概要 |
1.これまでに報告したp30をコードする遺伝子5'末端が不完全だったので、完全長cDNAのクローニングを試みた。5'末端が45塩基長い2つのクローンが得られ、メチオニンから始まる読み取り枠が認められた。別のcDNAは5'末端は不完全であったが、3'側で2塩基の欠失によるフレームシフト変異が存在した。このほか、cDNA間にはプリン間2カ所、ピリミジン間4カ所の変異とトランスバ-ジョン変異が1カ所認められ、プリン間の変異はArg→Lys、Asn→Aspの違いに相当していた。 2.モノクローナル抗体を用いて虫体からp30を精製した。非還元状態ではp30はオリゴマーとして存在することが明らかになった。精製したp30のアミノ酸組成分析から、クローニングされたcDNAは完全なコード領域を含んでいると思われ、塩基配列から予想されるp30の分子量は26,253、等電点は7.44であった。 3.p30のアメーバ症患者血清との反応性をウェスタンイムノブロット法で検討した。アメーバ性肝膿瘍の患者血清とは反応したが、腸アメーバ症患者血清との反応性は低かった。λgt11により大腸菌で発現させた融合蛋白質を用いたブロット法でも同様の結果が観察され、組換えp30がアメーバ性肝膿瘍の診断に応用できる可能性が示された。そこでpTrcHisを用いた発現を試みたが、十分量の蛋白質は得られなかった。 4.p30の局在を免疫電顕法によって検討したところ、核と細胞質に存在しており、細胞表面には存在しないことが確認された。p30のアミノ酸配列は、マウスの赤白血病細胞や骨芽細胞などで増殖に関連して発現される蛋白質と相同性が高く、p30も同様の機能を持つ蛋白質であると考えられた。
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