リーシュマニアの薬剤耐性の分子機構において、P-糖タンパク質遺伝子は、薬剤耐性遺伝子として中心的役割を果たしていることが明らかになってきた。しかしP-糖タンパク質遺伝子は多重遺伝子であるため、リーシュマニアでは種に応じて機能の異なるP-糖タンパク質遺伝子が存在すると考えられる。これまでに2つの異なるタイプのP-糖タンパク質遺伝子(Ldmdr1とLtpgpA)が単離されているが、本研究では、Leishmania amazonesisに焦点をあて、本種のP-糖タンパク質遺伝子の特性を明らかにすることを目的とした。そこでまず、P-糖タンパク質遺伝子に共通なATP結合部位を分離するため、これをPCR法で増幅しクローン化した。アミノ酸のホモロジー検索の結果、Ldmdr1と68%、LtpgpAとは37%の相同性しか示さないDNA断片を得た。これは、新しいタイプのP-糖タンパク質遺伝子の一部であると考えられた。そこで、この遺伝子の全長をクローニングするため、ゲノムライブラリーをLambda GEM-11を用いて作製した。上記のDNA断片をプローブとして、ライブラリーをスクリーニングし、得られた陽性クローンをSacIで切断の後、pUC19などにサブクローニングした。1005塩基対のSacI断片についてはその塩基配列を決定したが、目的の遺伝子は4kbを越えると推定されるため、現在残りのDNA断片について引き続きシークエンシングを行っている。また、サザンハイブリダイゼイションとパルスフィールド電気泳動による解析の結果、L.amazonensisには、Ldmdr1やLtpgpAに相同の遺伝子ならびに上記の新しい遺伝子を含めて、少なくとも3つのタイプのP-糖タンパク質遺伝子が存在することが強く示唆され、LtpgpA相同遺伝子は他の2つの遺伝子とは異なる染色体上に位置することが明かとなった。
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