多包虫をマウスの腹腔内に感染させることによって、多数の腹腔マクロファージが誘導されてくる。しかしながら、in vitroにおいては活性化されたマクロファージによって多包虫は殺滅されるものの、in vivoでは感染は阻止されることなく成立し、最終的には死に至らしめる。すなわちマクロファージがin vivoでは感染に対し有効に機能していない。この現象について以下の点を明らかにした。 1、多包虫の感染によってマウス腹腔マクロファージの貧食能は低下する。貧食能の低下は感染後約6週目頃から著明となる。低下した貧食能は外部からIFN-γを加えることによって回復させることができる。 2、多包虫の感染によってマウス腹腔マクロファージの窒素酸化物の産生は誘導されない。感染後いずれの時期から採取したマクロファージを用いても窒素酸化物の産生は外部からIFN-γをくわえることによって産生を誘導することは可能であり。その産生能は正常マウスに比べ同等である。 3、感染後いずれの時期から採取されたマウス腹腔マクロファージはin vitroでIFN-γを加えて活性化させると、正常マウスから採取したマクロファージと同等の殺滅効果をin vitroで原頭節に対し発揮することができる。 4、感染マウスにおけるIFN-γ産生は低下している可能性が示唆された。おそらくその原因は感染局所におけるTh 1 T細胞の減少によるものと考えられる。 なぜ、感染局所においてTh 1 T細胞の減少が起きるかについては今後の研究課題として残された。
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