細菌感染防御における免疫系と神経系の相互作用を知るために、本研究者らは、神経系の指標として、リステリア感染マウスの感染局所におけるsubstanceP(SP)とvasoactive intestinal peptide(VIP)について免疫組織化学的手法を用いて検索したところ、肝臓でVIPが検出されることを昨年度は報告した。そこで、本年度はVIPのpreproVIP遺伝子の発現をRT-PCRによる検出とVIPのELISAによる検出法の確立について検討を行った。 リステリア非致死感染および致死感染マウスの肝臓におけるpreproVIP遺伝子の発現を経時的に検討したところ、非致死感染では肝臓からの菌の排除が始まり、リステリア特異的なT細胞の出現する感染3日目からpreproVIP遺伝子の発現が認められた。一方、致死感染では感染1日目からその発現が認められ、一旦減少するものの、斃死直前まで発現していた。 VIPのELISA法については、使用に耐えうるシステムを確立することはまだ成功していない。 今後、リステリア感染マウス肝臓におけるVIPの発現がIFN-γ、TNF、IL-4、IL-6、IL-10といったサイトカインに調節を受けているか、また、VIP拮抗物質を用いてVIPが感染防御あるいは病体形成に働いているか、について検討を進めるとともに、VIPの簡便的な定量法の確立を目指したい。
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