研究概要 |
好熱菌のHSP遺伝子の読取枠の上流領域の塩基配列を決定し、熱ショックプロモーター領域を解析した結果、次のようなことが解明した。超好熱菌でも同様な熱ショック応答のメカニズムがあるのかどうか検討した。 1.好熱菌B.stearothermophilus sp.PS3のHSP60オペロンとHSP70オペロンの上流には、熱ショックプロモーター領域が存在し、その構造は、TTGCAA---(17nucleotides)---TAATATであった。これは各種グラム陽性菌間では非常によく保存されており、相同性が高く、大腸菌などグラム陰性菌で報告されている熱ショックプロモーターとは異なっていた。 2.HSP60オペロンとHSP70オペロン上流の熱ショックプロモーターのすぐ下流にHairpin-loop構造があり、その構造は、TTAGCACT---(11nucleotides)---AGTGCTAAで、11塩基対のループと8塩基対のステムにより構成されていた。この構造はS.aureus,B.subtilis,C.acetobutylicumなどにもあって100%の相同性をもち、グラム陽性菌に特異的なものと思われる。好熱菌を含むグラム陽性菌では、熱ショックプロモーターとHairpin-loop構造が熱ショック応答に関与していることが予想される。これらの領域の欠失変異DNAを作成し、詳細な解析を進めている。 3.高温(65度)でしか生育できない好熱菌でも熱ショック応答は常温微生物と同様なメカニズムで制御されていると思われる。しかし、ストレス条件下で生育している好熱菌および黄色ブドウ球菌におけるHSPの構成的発現量はともに全細胞質内蛋白量の約1-2%を占め、常時、これらが細胞内蛋白質の変性を防御しているらしい。 4.超高温(96-104度)で生育する3種の超好熱菌についてその熱ショック応答のメカニズムを調べるため、HSP60とHSP70の遺伝子からデザインしたプライマーを用いてDNA断片を増幅したところ、目的とするDNA断片が得られ、これらの菌にも熱ショック蛋白質の存在が確認された。
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