温度感受性プラスミドRts1の複製に必須なRepA蛋白の機能について主に実験を行っている。今までに、変異型RepA蛋白のうち、特に興味深いz279と命名されたもの(不和合性はあるが、ori-activation活性を持たない。)の部分精製標品を用いて、DNA結合能及び結合パターンを、Gel shift assay法で解析した。次に示す様な、5つのフラグメント、即ち(1)Rts1のorigin及びincII領域を含むフラグメント、(2)Rts1のorigin及びincII領域さらにoperater promoter領域を含むフラグメント、(3)incI領域を含むフラグメント、(4)RepA遺伝子のoperater promoter領域を含むフラグメント、いづれのフラグメントを用いた場合においても、野生型RepA蛋白とほぼ同様の結合パターンを示し、さらに、変異RepA蛋白z279のRts1のoriginフラグメントへの結合が、野生型RepA蛋白と同様なベンディングをもたらすものであることが示唆された。以上の事から、変異RepA蛋白z279のアミノ酸の変異、即ち279番目のアルギニンのグリシンへの変異は、そのautorepressor活性及びDNA結合能には何ら影響を与えないという結論に導かれた。 そこで、C末端領域にある279番目のアルギニンのグリシンへの変異が重要であることから、C末端領域の機能に関して研究するために、Rts1とhomologyの高いP1プラスミドの複製に必須なRepA蛋白との間でいくつかのハイブリッド蛋白(N末側はRts1由来、C末側はP1由来)を作成し、特にC末端で組変わったものについて、研究を勧めた。 興味深い事には、C末側、25個のアミノ酸が組変わったものは、autorepressor活性を有するが、C末側、80個のアミノ酸が組変わったものは、autorepressor活性を失っていた。autorepressor活性発現には、二量体形成が不可欠と言う他のRepA蛋白の報告を考えあわせると、C末側はとくに二量体形成に重要であり、C末端領域が変異している変異RepA蛋白z279は二量体形成に働く蛋白間の相互作用が野生型RepA蛋白とは異っていると考えられる。
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