日和見真菌感染の原因菌として最も高い頻度で出現するカンジダ酵母の病原性のひとつに形質の高い変異性があげられており、パルスフィールド電気泳動による染色体核型の変化との関係が指摘されている。われわれは、この核型の多様性は染色体再配列によるものと考え、これに関与すると推測される反復配列RPSを見いだし、その構造と機能の解析をおこなった。他方、多数の臨床分離株について核型の多様性を調べ、疫学への応用の可能性についても研究した。 1.さきに、Candida albicans染色体より分離同定された反復配列RPSについて、ここでは、個々の染色体からRPS配列をクローニングしそれらの塩基配列を決定し比較した。RPSはさらに短い反復配列を含んでおり、その種類と数の相異がより高次の多様性をもたらすことを明らかにした。そして、この構造がひとのセントロメアに類似していることを指摘した。 2.RPSの染色体再配列に関与する可能性を検討するために、RPSの染色体上での位置を決め、6番染色体のRPS近傍領域の物理的地図の作成をおこなった。 3.入院患者から分離された多数のCandida albicans株について電気泳動核型を比較した結果、由来する臨床材料、患者の病棟などと有意な関係は見いだされなかったが、多くの分離株はFC18株の核型に類似していた。 4.同一患者から反復して分離されたCandida酵母の核型は、ほとんど同一であることが示された。 5.白血病患者と付添いの親から分離したC.albicansの株について、電気泳動核型、RFLP、RPSのサザンハイブリダイゼーションによる解析を行うことによって、患者と親との間の感染経路を示すことができた。
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