研究概要 |
1.分析法の確立と他のビブリオ属菌における分布:逆相カラムを用いるHPLC分析法を確立した。本法を用いて特に他の病原ビブリオについて調査したが,ビブリオフェリンの産生は認められなかった。即ち,ビブリオフェリンは腸炎ビブリオにおいて特異的に鉄制限下に産生されるシデロフォアであることが判明した。 2.患者及び環境由来腸炎ビブリオでの分布の相違:臨床分離株,原因食品由来株及び環境由来株,合計60株についてビブリオフェリンの産生量を定量した。一般的に環境由来株は鉄制限下での増殖が他の由来株より低い傾向が見られ,菌体当たりのビブリオフェリン産生量も少なく,検出限界以下の菌株も認められた。食品由来株は意外にもビブリオフェリン産生量が多く,臨床株以上の菌株も認められた。しかし,臨床株の方が有意に多いことがわかった。現在,株数を増してこの傾向を再検討している。 3.宿主鉄結合蛋白よりの鉄獲得能の解析:AQ3354株からビブリオフェリン非産生自然変異株(MY-1)を単離した。この株とAQ3354株との増殖を比較することによって,ビブリオフェリンは30%鉄飽和(生理的)ヒトトランスフェリンから鉄を獲得できることが判明した。しかし,ヒトラクトフェリン鉄はほとんど利用できなかった。また,腸炎ビブリオはヘム鉄も利用できることが示され,現在,詳細な機構について検討中である。 4.本物質産生能とinvasivenessとの関連:AQ3354とMY-1を用いて実験条件の設定を検討中である。 5.ビブリオフェリン-鉄に対する外膜レセプター蛋白の同定:^<55>Fe-ビブリオフェリンを外膜蛋白分画と処理後,電気泳動を行って,外膜レセプターを特定した。本蛋白を精製し,その抗体を調製中である。
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