研究課題/領域番号 |
05670263
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
松浦 基博 自治医科大学, 医学部, 助教授 (20150089)
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研究分担者 |
斉藤 慎二 自治医科大学, 医学部, 助手 (50195989)
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キーワード | エンドトキシンショック / 細菌内毒素 / エンドトキシントレランス / リポ多糖(LPS) / 合成リピドA類縁化合物 / 腫瘍壊死因子(TNF) |
研究概要 |
グラム陰性菌による敗血症に際しては、その細胞壁構成成分であるエンドトキシン(LPS)の遊離に伴ってショックの誘発が危惧される。このショックの誘発にはLPS刺激によって活性化されるマクロファージ(Mphi)から放出されるモノカイン類、特に腫瘍壊死因子(TNF)、の関与が大きいことが明らかになって来ている。エンドトキシンショックの動物実験モデル系(マウスを使用)で、前もって少量のLPSを投与されたマウスはLPS刺激に対する応答性を低下させ、その後、ショックの誘発に十分量のLPSで攻撃してもショックを起こして死亡することが少なくなる。LPS自身は毒性が強く少量の前投与にも問題が残るが、LPSの活性中心であるリピドAの構造類縁化合物の中に、毒性は示さないがこの様なショックの抑制効果は発揮できる化合物を数種類見出している。本研究では、Mphiの培養系を用い、細胞レベルでもTNF産生に対する抑制効果を発現できることを示し、その際、細胞レベルでの刺激伝達系にどの様な変化が生じているかについて検討した。TNF産生抑制効果を発揮できる化合物は、mRNAの産生段階で既に抑制を掛けていること、LPSの刺激伝達系に関与している可能性の高いタンパク質リン酸化反応の幾つか(代表的な65kDa及び58kDaタンパク質などのリン酸化)にも抑制を掛けていることを見出した。また、Mphi細胞へのLPSの特異的結合に関しても現在研究が進行中であるが、この結合に関しては抑制を掛けていないことを示唆する結果が出つつある。これらの結果を考え合わせると、リピドA類縁化合物で前処理されたMphiのLPS刺激に対する応答性低下機構としては、LPS結合部位(あるいは受容体)の数の減少によるものではなく、Mphi細胞表面へLPSが結合した後の情報伝達系の初期の段階で抑制が掛るため、その後の情報伝達系タンパク質リン酸化反応を経てmRNAの産生へと刺激伝達が流れて行かない機構が存在している可能性が示唆された。
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