細菌性(乳幼児)下痢症に於ける持続性感染(>2w)の原因菌の中、腸管病原性大腸菌(EPEC)については一応の成果を得て、J.Infect.Dis.に報告した。この場合には、EPECが腸管局所免疫の要であるパイエル板のM細胞(抗原摂取細胞)に粘着しないことが明らかになったが、このメカニズムで局所免疫から逃避し、腸管粘膜での持続性感染を可能にしていると考えられた。今回は、さらに、持続性・細菌性(乳幼児)下痢症の新しい研究分野であるentero-aggregativeE.coli(EAggEC;腸管凝集粘着性大腸菌)とdiffuse-adheringE.coli(DAEC;分散粘着性大腸菌)について研究した。 EAggECとして用いた2株が、EAggECとDAECの中間型の粘着性を示した。粘着因子は新しい57kDaの外膜蛋白で、ヘモアグルチニン(HA)活性を示した。57kDaの外膜蛋白はプラスミドから産生されたが、その構造遺伝子は重複して存在し、さらにその発現が遺伝子によってポシティブに調節されていた。従って、EAggECの粘着因子(線毛)とは明らかに異なっていたが、耐熱性毒素EAST1を産生すること、小腸より結腸粘膜によく粘着することはEAggECと同様であった。 次に、DAECを解析したが、中の1株がアクチンの凝集活性を持つことが明らかになった。この株は、さらに微絨毛を伸長させ、細胞侵入性を示した。DAECでアクチンの凝集活性を持つ例はこれが最初の例である。 本研究の過程で、全く新しいケテゴリーの下痢原性大腸菌(候補株)が2つも明らかになった。さらに、病原性について研究を進めたい。
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