研究概要 |
緑膿菌は日和見感染症の主要起因菌である。緑膿菌は多くの抗生物質に自然耐性を示す。その原因の一つは外膜の障壁性に由来し、それは外膜の透過孔が小さいからである。報告者は外膜蛋白のうちでproteinC,D2,E1がポーリンであることを発見し、これらポーリンの透過孔は小さいことを明らかにしてきた。一方カルバペネム系薬剤のイミペネムは高い抗緑膿菌活性を示す。ところがイミペネムに耐性な菌が出現するようになり、その多くはproteinD2が欠損していた。そしてproteinD2にはイミペネム及び塩基性アミノ酸の結合サイトがあると報告された。そこでproteinD2の構造と機能を明らかにする目的で研究を行った。そしてproteinD2は孔形成ドメインとゲート形成ドメインからなり、物質透過の調節を行うチャンネルであることを発見した。そこで報告者はproteinD2のゲート開閉調節因子を調べた。proteinD2のゲートドメインにはCa^<2+>結合蛋白にあるCa^<2+>結合サイトと相同な配列のあることがわかった。そこでproteinD2にCa^<2+>を加えると蛋白の蛍光が変化し、Ca^<2+>の結合が示された。次にCa^<2+>を加えるとproteinD2のポーリン活性が増加した。しかしゲートを分解するとCa^<2+>による活性化は見られなくなった。これはCa^<2+>がゲートドメインに結合し活性化する調節因子であることを示す。次にprotein D2はペプチドを分解しアミノ酸を取り込むためのプロテアーゼ活性をもつのではないかと報告者は考えた。そして以下の結果を得た。(1)proteinD2にペプチド基質を加えると、基質の分解が見られた。(2)セリンプロテアーゼの特異的阻害剤であるDFPの処理により、分解反応は阻害された。(3)[^3H]で標識されたDFPは特異的にproteinD2を標識した。以上の結果はproteinD2そのものがプロテアーゼ活性をもつことを示す。これまでに知られているチャンネル蛋白の中でプロテアーゼ活性をもったチャンネル蛋白の存在を示したこの発見はチャンネル蛋白研究に新たな境地と開くと考えられる。
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