HTLV-I感染細胞、HUT102ならびに非感染細胞、Jurkatより核抽出液を調整し、ヘパリンアガロースカラムを用いてKCl濃度にて分画を行い、0.1M、0.2M、0.3M、1M KClの各分画を得た。まず、HUT102の各分画について、p40^<tax>に対するモノクローナル抗体にてウエスタンブロッティングを行ったところ、p40^<tax>は、0.1M KCl分画(flow through)に大部分が溶出されるが、0.2M、0.3M、1Mの各分画にも検出された。 次に、ゲルシフトアッセイを行ったところ、21塩基配列をプローブとした時には、HUT102、Jurkatとも、0.2M、0.3M、1M KCl分画にDNA結合活性が認められた。NF-κB配列をプローブとした時には、HUT102の0.1M、0.2M、0.3M、1M KClの全分画にDNA結合活性が認められたが、Jurkatの各分画にはDNA結合活性は認められなかった。 さらに、これらの各分画をin vitro転写系に加えたところ、HUT102の0.2M、0.3M KCl分画は、21塩基配列、NF-κB配列をそれぞれエンハンサーとして持つ鋳型DNAの転写を活性化したが、Jurkatの0.2M、0.3M KCl分画には、転写活性化能は、認められなかった。また、HUT102、Jurkat双方の1M KCl分画は、どちらのエンハンサーの転写も抑制することより、1M KCl分画には、細胞非特異的な転写抑制因子が含まれると考えられた。 最後に、p40^<tax>の機能をあきらかにするために、転写活性化能の認められたHUT102の0.2M、0.3M KCl分画にさらに二種類の抗p40^<tax>モノクローナル抗体を加えたところ、どちらの抗体も、21塩基配列、NF-κB配列をエンハンサーとする鋳型DNAからの転写を、最大50%抑制した。このことより、p40^<tax>は、転写そのものに作用するのみならず、細胞因子の修飾にも関わっている可能性も考えられた。
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