EBウイルス初期遺伝子BZLF1にコードされるZタンパクは宿主細胞に潜伏感染したEBウイルスを複製サイクルに誘導する転写因子である。このZタンパクは、細胞性転写因子であるAP‐1ファミリーとりわけFosタンパクとの間にそのアミノ酸配列において高い相同性を有する。ZタンパクとAP‐1ファミリータンパクは共通のDNA配列であるTPA応答配列(TRE)を認識して結合するにもかかわらずZタンパクは、細胞性AP‐1ファミリータンパクにより制御される細胞性遺伝子プロモーターを活性化することはできない。ウイルスプロモーターと細胞性プロモーターの違いは細胞性プロモーターではZタンパクの結合部位が一個であるのに対してウイルスプロモーターでは常に複数連続している点である。実際に細胞性プロモーターにTRE配列を追加することによりZに反応するようになった。一方細胞性の転写因子であるc‐Jun‐c‐Fosはいずれのプロモーターをも活性化することができた。Zとc‐Fosタンパクの間ではアミノ酸配列のホモロジーが高いことから両者の融合タンパクを作成してその特異的がいずれの配列によるものかを解析した。その結果Zタンパクのグルタミンが連続して存在する100-110アミノ酸領域がその特異性を担っていることが判明した。
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