Epstein-Barr(EB)ウイルス初期遺伝子BZLF1にコードされるZタンパクは宿主細胞に潜伏感染したEBウイルスを複製サイクルに誘導する転写因子である。このZタンパクは、細胞性転写因子であるAP-1ファミリーとりわけFosタンパクとの間にそのアミノ酸配列において高い相同性を有する。ZタンパクとAP-1ファミリータンパクは共通のDNA配列を認識、結合するにもかかわらずZタンパクは、細胞性AP-1ファミリータンパクにより制御される細胞性遺伝子プロモーターを活性化することはできない。本研究ではZタンパクEBウイルスのプロモーター得意的活性化機構を検討するために、Fosタンパクとの融合タンパクを作成しEBウイルスのBMRF-1およびBHRF-1遺伝子プロモーターと細胞由来の92kDa-4型コラゲナーゼおよび組織特異的マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害物質TIMP-1遺伝子プロモーターからの転写活性化能をZタンパクと比較検討した。ZタンパクによるEBウイルスプロモーター活性化には、その100-110アミノ酸領域、とりわけ102、104、105、108番目の4個のグルタミンが必須であり、また108番目のグルタミンを置換することによりZタンパクの活性化できなかった92kDa-4型コラゲナーゼ、TIMP-1遺伝子プロモーターを活性化できるようになった。一方ZのDNA結合領域N末端側に隣接する162-169アミノ酸領域をFosタンパクの対応する領域と置換することによってもそのプロモーター特異性を変化させることができた。Zタンパクの転写活性化能およびプロモーター特異性は、Zタンパクと二量体を形成しうる欠質変異体の発現によっても変化することからZタンパクの二量体としての立体構造により決定されていることが示唆された。
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