目的および意義:EBVトランスフォームリンパ球(LCL)におけるEBNAの発現は6種類のEBNAに共通なCまたはWプロモーターを使って行われるのに対し、バーキットリンパ腫(BL)細胞ではEBNA-1にユニークなFプロモーターが使われ、EBNA-1のみが発現する。今回、BL由来Akata細胞からEBVゲノム陰性の細胞クローンが分離されたので、EBVの再感染を行ない、BLでのFプロモーターの使用がBL細胞側の要因によるものか否かを調べた。また、Akata細胞は抗ヒト免疫グロブリン抗体(抗Ig)処理によりEBV産生が効率良く誘導され、このユニークな性状が再感染でも認められるか否かを併せて検討した。 材料と方法:Akata細胞をクローニングして得られた5種類のEBV陰性クローンへ、B95-8またはAkata EBVを感染し、EBNAの発現を蛍光抗体法、ウエスタンブロット法により、EBNAプロモーターの使用をRT-PCR法により調べた。抗Ig抗体によるウイルス産生誘導はVCA抗体による蛍光抗体法により調べた。 結果:1.EBV陰性クローンはいずれもEBVに感受性で、感染3日目に最高40%の細胞がEBNA陽性となった。2.ウエスタンブロット法で、EBNA-1に加えEBNA-2、EBNA-3が検出された。3.RT-PCR法で、親株がFプロモーターを使用していたのに対し、再感染細胞ではC、Wプロモーターを使用していた。4.抗Ig抗体処理によりウイルス産生が誘導されなかった。 考察:BLとLCLでの使用プロモーターの違いは細胞側の要因以外のものによること、C、Wプロモーター使用により発現したEBNA-1以外のウイルス抗原が抗Ig抗体刺激によるウイルス産生誘導を抑制している可能性、が示唆された。
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