HTLV-Iエンベロープ抗原の中和エピトープを探るため、これまで試したことのないC57BL/6マウス(B6マウス)で単クロン抗体の作製を試みた。B6マウスをHTLV-Iエンベロープを発現する組み換え種痘ウイルスで免疫した。増殖性の良好なハイブリドーマをスクリーニングし、エンベロープ抗原に反応する抗体を持続的に産生するものを26種選択した。これらの抗体がエンベロープ抗原上のどの部分を認識するかをELISA法で調べた。gp46アミノ酸175-199(pep175-199)には14種、pep253-283には5種、pep277-292には1種、pep288-312には6種の抗体が反応した。従って、今回の細胞融合によって得られたB6マウスからの抗体は、全てgp46抗原と反応し、その反応領域によって大まかに4群に分けられることが分かった。得られた抗体の中で、中和活性のあったのはpep175-199に対する抗体群のみで、他の3タイプには中和活性がみられなかった。中和活性のある抗体の詳細なエピトープマッピングを酵素抗体法で行った。gp46アミノ酸185-204の領域の中でオーバーラップする10-merの合成ペプチドに対し、全ての中和抗体は、gp46アミノ酸191-196を持つペプチドと反応した。このエピトープは、既にWKAラットmAbで明らかにされた中和エピトープであり、かつHTLV-Iキャリア由来のヒトの抗体でも認識されるB細胞エピトープである。この実験結果はペプチドワクチン作製へのアプローチに必須な手掛かりである。現在、このエピトープを含む種々の合成ペプチドで、ウサギやラットを免疫し、最も良く中和抗体を誘導する構造を検討中である。
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