1 T7ポリメラーゼ遺伝子を導入した組換え体の作製 大腸菌由来のlacZ遺伝子にpBluescript由来のT7プロモーターを導入し、T7ファージのRNAポリメラーゼ遺伝子にマウスメタロチオネイン遺伝子のプロモーターを導入し、両者ともSV40のpolyAシグナルを下流に挿入した。そしてhead to headの形で結合させてからヒトサイトメガロウイルス(HCMV)に外来遺伝子を導入するためのベクターpKMに挿入しpMTpolを得た。制限酵素切断でリニアーにしたpMTpol1mugとHCMVゲノムDNA1mugをヒト胎児肺細胞(HEL)に燐酸カルシュウム法でコートランスフェクションを行った。約4週間後に、出現したプラークが全面感染したので培養上清を適当に希釈して再感染を行いすぐにアガロースゲルをオーバーレイした。7〜10日後にプラークを釣り上げて50mulのTEバッファーに懸濁した。その1mulをとりlacZを認識するプライマーを用いて30サイクルのPCRを行い組換えウイルスを判別した。その結果プラークを構成する細胞が10個程度でもPCRで組換えウイルスの識別が可能であった。 2 組換えウイルスの性質 組換えウイルスを2pfu/cellでHELに感染させて亜鉛50muM存在または不在下で培養上清中のbeta-ガラクトシダーゼ活性を測定した。亜鉛存在下ではT7ポリメラーゼによる増幅でbeta-ガラクトシダーゼ活性が非常に高いことが予想されたが、残念ながら亜鉛不在下と大きな差が見られなかった。調べたところ産生されたT7ポリメラーゼが核に存在せず細胞質に移行するためと分かった。そこで現在、核局在型のT7ポリメラーゼ遺伝子を開発したというドイツのMichael Straussと連絡を取り合って遺伝子を取得中である。これを用いて再度組換えウイルスの構築に挑戦する。
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