TCRαエンハンサー領域を検討したところ、(1)4個の亜領域のうちTα2亜領域が最も重要であることが判明した。さらにTα2亜領域内でもTα2a領域ではなく、Tα2b領域の中のEts-1結合配列と呼ばいれている部分が最も重要であることが分かった。 (2)この領域のDNAを用いてゲルシフト法による解析を行ったところ、3本のバンドが検出された。これら3本のバンドのうち1本のみがEts-1結合配列と呼ばれる領域に対応するバンドであった。この3本のバンドは抗-panEts抗体でスーパーシフトすることより、Ets-ドメインを持つファミリータンパク質であることが判明した。しかし抗-Ets1、抗-Ets2特異的モノクロナル抗体には3本とも反応しないことより、in vivoでのエンハンサー活性に重要な役割を果たしているTα2のEts配列に結合している蛋白質は従来いわれていたようにEts-1ではなく類似の新しい蛋白質であることが明かとなった。ほとんど全ての総説などに「TCRαエンハンサーのTα2領域にはEts-1がん遺伝子産物が結合し、それがエンハンサー活性に重要である。」と説明されているが、我々の研究により、実際はEts-1ではなくEtSドメインを持つ新しい蛋白質であることが判明した。 (3)新しく同定された蛋白質の分子量をUV-クロスリンク法を用いて検討したところ、約10KDaのT細胞特異的に発現している蛋白質であった。さらにクロスリンクの条件を強くしたところ31KDaの蛋白質が弱く結合していることが判明した。 (4)この新しいetsファミリー蛋白質のcDNAクローニングを試みている。etsドメインのアミノ酸に対応するオリゴヌクレオチドを用いて3'-RACE-PCRを行い、新しいetsファミリー遺伝子のcDNAの一部のクローニングに既に成功している。 このcDNAの全長を単離して解析を行っていきたい。
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