研究概要 |
(1)リンパ球系、造血系組織で発現するチロシンフォスファターゼのスクリーニングとcDNAクローニング:PCRで得た、既知遺伝子、未知遺伝子もプローブに用い、リンパ系、造血系を中心に種々の組織や細胞株での発現をRNAase protection assayやin situ hybridizationでスクリーニングしたところ、既知遺伝子では、PTPε、HCP、LRP、CD45、PTP1bが胸腺組織で発現していることが明らかになった。一方、未知遺伝子では、PTP36、PTPT8、PTPT9、PTPST21、PTPBM17がリンパ系細胞株で発現していた。未知遺伝子PTPST8は胸腺組織での発現はみられたものの、リンパ系細胞株での発現は認められず、おもにストローマ細胞に発現すると推定された。未知遺伝子PTPBR7は脳で発現していたが、リンパ系組織・細胞株での発現は確認出来なかった。PTP36,PTPST8,PTPBR7については、そのcDNA全長の解析を試みている。 (2)新しい膜型チロシンフォスファターゼPTPT9発現の解析:すでにcDNA全長のクローニングを完了したPTPT9のmRNAレベルでの発現は、組織全体でみた場合、脳、胸腺、肺、心、脾と広汎な組織でみられたが、肝では殆ど認められず、その発現に組織特異性があることが明らかになった。また、各種細胞株ではEL4をはじめとする胸腺腫細胞株、MRL104.8aを初めとするストローマ細胞株双方で発現がみられた。さらに、胸腺T細胞を分化段階の異なった細胞画分に分け、T細胞分化に伴う発現パターンの変化を検索したところ、最も末分化なCD4^-CD8^-細胞で最も強い発現が認められ、以後CD4^+CD8^+細胞からCD4^+CD8^-あるいはCD4^-CD8^+細胞へと分化が進行するにつれてその発現が著名に減少することが明かになった。PTPT9が胸腺内では分化課程にあるT細胞とストローマ細胞の両方で発現すること、かつT細胞分化に伴って発現が減少することから、この分子が未分化T細胞とストローマ細胞間での相互作用に関与する可能性が示された。
|