研究概要 |
DBA/1マウス由来T細胞クローンK-102は、II型コラーゲン(IIC)のCNBrフラグメントCBll(アミノ酸278個)と反応する。CBllフラグメント中にはT細胞エピトープが少なくとも5個存在するが、我々は、アミノ酸が10個ずつ重複する20merの合成ペプチドを作製し、それらとK-102細胞との反応性から、CBllのN末端50〜90番目にK-102が認識するarthritogenic epitope(関節炎誘起に関与するエピトープ;AE)が少なくとも1つ存在することを明らかにした。さらに、このアミノ酸配列を細かく切断した合成ペプチドとK-102との反応性などから、N末端60-81の22個のアミノ酸から成るペプチドIIC60-81が、目的とするエピトープであることを突き止めた。この合成エピトープは、K-102細胞のみでなくIIC感作マウスの局所リンパ節細胞とも反応性を示すことから、K-102細胞にのみ反応する特異なエピトープではなく、IIC感作によって誘導されるIIC反応性Tリンパ球の全レパートリーの中に含まれるAEに関与する重要なエピトープと推測された。 このIIC60-81は、単独でDBA/1マウスを感作してもコラーゲン誘導関節炎(CA)は発症せず、さらに、このマウスにその後、nativeのIICで感作してもCA発症性を示さず、加えて、これらのマウスの末梢リンパ細胞はIIC60-81に反応性を示さないことから、IIC60-81は、AEに関してトレランスを誘導し、ペプチドワクチン活性を有していることが明らかになった。さらに、IIC60-81を構成するアミノ酸と、I型コラーゲン(CA誘導性を欠く)のα1(1)鎖の対応する残基とがホモロジーが高くなるように、site-directed substitutionを行ったアナログペプチドを4種類合成して調べたところ、そのうちの1つIIC60-81(S68,78,80)は、wild type抗原のIIC60-81のI-A^qへの結合に対するアンタゴニストであることが示され、DBA/1マウスをIIC60-81で免疫する際、このIIC60-81(S68,78,80)を加えて共免疫すると、CAの発症を有意に抑制し、その機序はMHCアンタゴニストとして働いていることが示唆された。
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