研究概要 |
血清中のレクチンの一つであるマンノース結合蛋白(MBP)は自然免疫において重要な役割を担っている。MBPはマンノース等の糖鎖を持つ病原体に結合後、補体系を活性化して、これらを殺す作用を有する。MBPによる補体活性化において、血清中でMBPはCls様のセリンプロテアーゼのMASP(MBP-associated serine protease)と複合体を形成しており、MBPが糖鎖リガンドに結合するとMASPによりC4,C2の分解反応が起こる。本研究はMASPの構造と機能を明らかにすることにより、MBPによる補体活性化の機序の解明を目的として行われた。その結果、次の様な主な成果を得た。 1)ヒト血清より未活性型MASPを精製して、その性状を解析した。未活性型MASPは、分子量約93kDaの一本鎖のポリペプチドより成り、C4分解活性は無いが、MBPと複合体と形成した未活性型MASPは、いったんMBPがマンナンに結合するとC4分解活性を獲得する。 2)MBP-MASP複合体には血清中のα2-マクログロブリンが結合して、MASPの活性を阻害する。 3)MASPはClsには無いトリプシン様のC3分解活性を持ち、これにより生成したC3bが補体第二経路の引き金となる。 4)MBP欠損患者に見られる変異型MBP(コドン52のアミノ酸において、Gly→Aspの置換が起きている)には、MASPへの結合性が損なわれている。 5)cDNAの解析によりMASPの全一次構造を明らかにした。その結果、MASPにはClr/Clsとの相同性があり、これらに特徴的な6ケのドメイン構造を保持していることが判明した。
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