雄特異アロ抗原(H-Y)に対する同系雌マウスのキラーT細胞(Tc)応答は特定のMHCクラスI分子(本研究ではH-2D^b)に拘束されて出現する。すなわち抗H-YTcのリガンドはH-2D^6+H-Y 由来ペプチドである。遺伝子ターゲッテイングによりHAM-1やbeta_2M遺伝子欠損の見られるミュータントマウスでは、クラスI分子の細胞表面発現が阻止される。ミュータント雄マウスのリンパ球をin vivo免疫原として雌応答マウスへ投与した場合、抗H-YTc感作が一定でなく、個々の雌応答マウスで異なることを確認したが、さらに例数を増して検索中である。 一方、われわれが同定したH-43アロ抗原(マウスマイナー組織適合抗原)に対するin vivo Tc感作にも、ミュータントマウス由来リンパ球は欠陥のあることが示唆された。これらの知見は、免疫リンパ球(アロ抗原保持)が直接Tc前駆細胞を刺激感作するルートの存在を提示し、応答マウスのAPCで処理されたアロ抗原による感作ルートが唯一ではないことを支持する。応答マウスAPCによる感作(cross-priming)がミュータントマウスAPCで欠損するか否かを追求中である。
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