研究概要 |
1.マウス染色体遺伝子の単離:マウスCD7cDNAをプローブとして、BALB/cマウス脾臓細胞由来の染色体遺伝子ライブラリーをスクリーニングし、4個の陽性クローンを得た。これらの制限酵素地図を作製したところ、クローン間で共通な部分を持ち、結合すると全長24.4kbとなった。またこの遺伝子の構造について検索したところ、本遺伝子は4つのエクソンから構成され、およそ2.5kbに分布していた。また各エクソンはそれぞれリーダー、細胞外、膜貫通、細胞内の分子構造に対応しており、ヒトCD7と極めて類似していた。この遺伝子のプロモーター領域900bpについてヒトCD7と比較したところ、8bp以上一致する配列が10カ所認められた。またマウスのThy1あるいはT細胞レセプターV遺伝子と一致する配列が2カ所、GC boxが1カ所認められた。CD7抗原の機能を検索することを目的に、本遺伝子の欠失マウスの作製を始めている。 2.トランスフェクタントの作製、及び抗体の作製:マウスcDNAをSFFVプロモーター下に組み込んだ発現ベクターをラット細胞3Y1に導入することによりトランスフェクタントを作製した。mRNAレベルで発現を確認したトランスフェクタントをラットに免疫し、マウス胸腺細胞で抗体産生を検索したが、胸腺細胞にのみ反応する抗血清は得られなかった。また本抗原の細胞外ドメイン部分の2カ所に相当する21および19アミノ酸の合成ペプチドを作製し、家兎に免疫し、ELISAでは20万倍希釈まで反応する抗体を得たが、トランスフェクタントを標的抗原とした免疫染色、ウエスタンブロッティング法では残念ながら反応性は認められなかった。そこで現在合成ペプタイドとしては細胞外ドメイン、細胞内ドメインの各一カ所を選択し、新たに抗体の作製を始めている。また本抗原210アミノ酸のうち183、あるいは151アミノ酸とヒスチジンTag,あるいはGSTとの融合蛋白を大腸菌により作製し、精製蛋白を得ており、これを免疫原として抗体の作製を行っている。 3.トランスジェニックマウスの作製:申請者が報告した(1991)単離ヒト染色体遺伝子より遺伝子導入マウス5系を作製したが、そのうちの一系で非常に弱い発現が認められたのみであった。この遺伝子の制限酵素地図が本来の染色体遺伝子と異なっていたため、新たに染色体遺伝子の単離を行い、エクソンの5'上流側が15kb,3'下流側を8kb含むconstructを作製した。これを用いて新たに2系の遺伝子導入マウスを得たが、何れも発現を観察することはできなかった。
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