研究概要 |
ジーンターゲティングにより、B細胞表面抗原でありT-B細胞間相互作用において重要な機能を担うと考えられる2つの分子を欠損するマウスをそれぞれ作製、解析した。 1.CD23 この分子はB細胞活性化に伴い発現が増強する他、IgEに対する低親和性レセプターとしても知られ、IgEの免疫応答調節に何らかの機能を果たすと考えられてきた。CD23欠損マウスは正常に発育し、T,B細胞等の分化異常は認められなかった。IgEを含む免疫応答も、T細胞依存性及び非依存性抗原に対して対照マウスと差異を認めなかった。また、寄生虫Nippostrongyrs brasiliensis感染時にも高いIgE反応性を示し、CD23はin vivoにおいてIgE産生の免疫制御にそれほど重要な機能を果たしていないことが示唆された。一方、このマウスにおいてはIgEを介する抗原提示能の増強がみられないことから、CD23のin vivoでのIgEを介する抗原提示の重要性が明らかとなった。 2.CD40 この分子を欠損するマウスにおけるリンパ球成熟過程は概ね正常に保たれていたものの血中IgG1、IgG2a、IgG2bやIgAは著明に低下しており、免疫グロブリンクラススイッチの障害が示唆された。同様の現象はヒトにおける伴性劣性高IgM症候群患者においてみられ、この場合CD40に対するT細胞上のリガンドに変異があることが明らかになっている。 CD40欠損マウスにおけるT細胞依存性抗原に対する免疫応答は、IgM以外のクラスの抗体が産生されず、クラススイッチの障害が明らかとなった。この過程で二次リンパ慮胞における胚中心形成が障害されていることも明らかとなり、胚中心におけるB細胞の成熟、活性化、クラススイッチの重要性が示唆された。今後このCD40欠損マウスにおける抗体の親和性増強、免疫記憶細胞の問題にアプローチしていくことを計画中である。
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