本研究の目的は、微量元素、金属結合蛋白およびラジカルの神経伝達部位での動態および神経伝達機構において果たす神経化学的役割を解明することにある。本年度は、以下の実験を行った。 1.生後3、6、13、26および52週齢のラット脳8部位の微量元素濃度を測定した。測定した7元素(亜鉛、銅、ルビジウム、スカンジウム、マンガン、ストロンチウムおよびモリブデン)のうち、6元素が3週齢において高値を示した。加齢による微量元素濃度の増減が認められた。特に銅およびモリブデンの上昇、亜鉛およびルビジウムの減少が顕著であった。 2.最近開発された活性染色法を用い、ラット脳組織のスーパーオキサイド(O_2^-)消去活性の測定を行った。通常の部位別活性測定では、SOD活性の低いことが報告されている海馬で、高いO_2^-消去活性が認められた。このことから、海馬では、スーパーオキサイドラジカルの発生を伴う反応が起こることが示唆された。 なお、神経細胞成長抑制因子の抗体の精製、一酸化窒素合成酵素活性の測定は、現在進行中である。また、平成6年度に行うマイクロダイアリシス法を用いた実験の基礎的な検討も終了した。
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