過労死を起こす疾病としては、脳血管疾患、虚血性心疾患等があげられる。平成5年度は脳血管疾患、虚血性心疾患の発生と密接な関係がある耐糖能障害に注目し、労働態様や労働時間の違いが、耐糖能異常を中心とした身体の健康水準にどのような影響を及ぼしているのかを90名の製鋼所従業員を対象に検討した。 対象者は、75gGTT成績と肥満度よりA:GTT1時間値160未満・肥満度10%未満、B:160未満・10%以上、C:160以上・10%未満、D:160以上・10%未満の4群に分けた。また、勤務条件別に事務系、現業系に分け、さらに現業系を日勤と交替、交替はさらに2交替、3交替の2群に分け、計4群とした。 事務系と現業系の日勤者の比較では、A群で、GTT2時間値は、事務系で高く、有意差が認められた。B群で、肥満度は、事務系で高く、総コレステロール値は、現業系で高く、それぞれ有意差が認められた。 現業系日勤者と交替者の比較では、A群で、GTT2時間値は、交替者で高く、有意差が認められた。B群で、GTT2時間値は、交替者で高く、有意差が認められた。C群で、肥満度、GTT1時間値、HDLコレステロール値は、交替者で高く、有意差が認められた。 現業系2交替者と3交替者の比較では、B群で収縮期および拡張期血圧は、3交替者で高く、有意差が認められた。D群で、GTT2時間値とGOTは3交替者で高く、HDLコレステロール値は、2交替者で高く、有意差が認められた。 職場環境の違いにより耐糖能異常を中心とした健康水準に違いが認められ、過労死の原因となる脳血管疾患、虚血性心疾患の予防を進めていく上で、勤務条件、作業環境を考慮した保健指導が重要と考えられたが、今後、より詳細な検討が必要である。
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