パーキンソン病は加齢、環境因子、遺伝的素因の3つの要因による多因子遺伝性の中脳黒質細胞の変性疾患である。これらの3要因の検索のために、医療機関を外来通院中の患者64名の同意を得て、末梢血液を採取しDNAを抽出した。これや患者集団の遺伝的変異を正常健康者集団におけるそれらと比較するために、医学部学生にも同意を得て彼らの採血も行った。そこで、外来物質の解毒作用を有するシトクロームP450デブリソキン/スパルテイン遺伝子のDNA変異を検索した所、日本人集団における新しい酵素機能欠損を伴うDNA変異を同定した。このDNA変異は白人集団では同定されず、東洋人に特有の変異と思われた。パーキンソン患者46名におけるこのDNA変異の頻度は健康者集団における頻度と有意な相違は見られず、疾患との相関はみられなかった。 ドーパミン転移酵素の変異を検出するために、PCRによる40塩基の反復配列回数の個体差の検出を試みた所、正常日本人集団において7、9、10、11回と反復回数の異なる遺伝子型が同定された。これらの変異はメンデルの共優性遺伝性を示した。パーキンソン病患者集団における遺伝子変異の頻度は正常者集団と有意な差がみられなかった。 さらに、加齢と共に遺伝子頻度の減少するアポプロテインE(ApoE)の4型遺伝子頻度をパーキンソン患者集団において検索した結果、正常若年者に比べて2倍の頻度で検出され、パーキンソン患者において有意に高かった。
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