脳におけるアミロイド蛋白質の生成と微量元素の蓄積およびその蓄積が学習能力に及ぼす影響を以下の3つのことを分析することにより検討することを試みた。アミロイドの生成あるいは沈着には、リソゾーム中に存在する種々の酵素活性が重要な働きを担っているとの仮説をたてた。それを検証するためには、まず純度高く調製された脳リソゾームを必要とするので、最初に脳リソゾームの新しい調製法を検討し、Posthuclear溶液をカルシウム溶液中でincubation後Percollに重層し遠心分離することによって、純度高いリソゾームを得ることができた。 次いで微量元素の動態とリソゾームの機能の関連を検討するためにラット肝臓を用いて、銅代謝におけるリソゾームの役割を分析した。その結果、銅を投与することによって肝ソソゾーム中の酵素活性の低下が見られたが、肝タンパク質あたりのリソゾーム量の増加が認められた。このことは、肝リソゾーム中への銅蓄積によるリソゾームの機能低下をリソゾーム量を増加させることで代償的に働いていることを示しており、微量元素の動態とリソゾームの機能の関連が確かめられた。 最後に、ラット脳タンパク質の変化と学習能力との関連を、香辛料摂取ラットを用いて検討した。全脳可溶性タンパク質の二次元電気泳動による泳動パターンを比べてみると、対照ラットで認められた分子量約7万のタンパク質スポットが消失していた。香辛料を摂取した結果タンパク質の質的な差が出たことを示している。この両群の水迷路による学習能力を比べてみると、5%濃度の香辛料を45日間摂取したラツトで学習能力の低下が認められた。このことは、脳内に存在する何らかのタンパク質の質的な変化がその学習能力に大きな影響を及ぼすことを示している。
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