一般中学生455名(男子228名、女子227名)と山形大学付属病院で神経症水準の症例と診断された中学生50名(男子12名、女子38名)に対して、自己評価式精神症状尺度であるsymptom rating test(以下SRTと略す)、ライフ・イベント一覧表、ストレス対処法調査表、両親の養育態度の評価尺度であるparental bonding instrument(以下PBIと略す)を含む精神保健調査を実施した。一般中学生のうち1年生と2年生については、約1年後に追跡調査を実施した。 臨床群と一般中学生群を比較した結果では、SRTで明らかな有意差があり、臨床群がやはり精神症状の訴えが2倍以上あることがわかった。ライフ・イベントの経験やストレス対処法、PBIについての比較からは、臨床群において、影響度の高い出来事の経験や主観性の高い出来事の経験が多いことと、親の養育態度が子どもから見るとやや過干渉的である傾向が示された。 一般中学生については、精神症状とライフイベントの経験、ストレス対処法、親の養育態度の各変数の間に有意な関連があることが示唆された。ライフイベントの経験や親の養育態度、ストレス対処法のあり方が、精神症状と無関係ではないということが示唆された。 1年間の変化を追った縦断的な検討では、ライフイベントとの関係ははっきりしなかった。また、1年前の時点のストレス対処法のあり方が、精神症状の変化を左右することはないという結果であった。そして、1年後に精神症状が増えたものに、回避的なストレス対処法を取るものが多いという傾向が認められた。 中学生の精神的な問題は、様々な要因が相互に複雑に絡み合って生じており、精神的な健康の悪化と、ライフイベントの経験とストレス対処法の変化とは、ほぼ並行して起こると考えた方がよいと思われる。
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