職業性の鉛および有機溶剤曝露の免疫学的影響を評価するため、以下の研究を行ったところ、それぞれにおいて以下に示す知見が得られた。 1.毎週3日連続してキレート剤CaEDTAの点滴静注を受けている2人の男子鉛作業者の免疫グロブリン、リンパ球分画および他の鉛関連指標を測定したところ、点滴後に、一人の作業者で、lgG、lgA、lgM、CD8+細胞およびCD57+細胞の有意の増加、もう-人の作業者で、lgDの有意の増加がみられた。また、一人の作業者で、血中鉛濃度とlgGの間に、有意の負相関がみられた。CaEDTAの点滴静注により、抗体産生能等の免疫機能上昇が示唆された。 2.ステアリン酸鉛を製造している29人の男子鉛作業者のリンパ球分画を解析したところ、高血中鉛群(血中鉛濃度20μg/dl以上)で、CD16+ナチュラルキラー(NK)細胞数の有意の減少がみられた。また、CD16+細胞数と血中鉛濃度との間に、有意の負相関がみられた。CD16+NK細胞は、リンパ球分画の中で、鉛の影響を受けやすいことが示唆された。 3.ステアリン酸鉛を製造している71人の男子鉛作業者のTリンパ球分画を解析したところ、CD3+CD45RO+(メモリーT)細胞数の有意の減少がみられた。また、CD3+CD45+(ナイーヴT)細胞比率と血中鉛濃度との間に、有意の正相関がみられた。CD45RO+メモリーT細胞は、Tリンパ球分画の中で、鉛の影響を安けやすいことが示唆された。 4.トルエン曝露を受けている16人の男子グラビア印刷工のリンパ球分画を解析したところ、就業日の終わりに、全てのNK細胞分画細胞数、CD4+CD45RA+細胞数およびCD8+細胞数の減少、B細胞の増加およびそれらと血中トルエン濃度との関連がみられた。これらの細胞数の変化は、トル工ンの影響であることが示唆された。
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