今回の研究は、アルコールによる神経、精神および行動障害について、疫学、臨床、および実験研究を行い、飲酒動機と飲酒行動の関係、断酒に寄与する因子、アルコールによる神経行動障害の特徴、断酒の動機づけなどを明らかにすることを目的とした。主な成果は以下の通りである。 1)アルコール依存者を対象として、質問紙法によって断酒に寄与する因子の調査を行った。断酒が継続している群では、これが失敗している群に比べて、良好な家族関係、仕事の継続および断酒会への参加が断酒に役立つとする回答が多かった。 2)高校生を対象とした質問紙調査を行い、飲酒動機と飲酒行動の関係を検討した。これより、高校生の飲酒動機が、逃避、社交、緊張解消、成人への憧れおよび娯楽の5つに整理された。問題飲酒行動の経験のある者では、逃避、社交および緊張解消のための飲酒が多く、これらの動機が問題飲酒行動に結びつくことが示された。 3)アルコール依存者を対象に種々の神経生理学的検査を行った。アルコール依存者では、心電図R-R間隔変動の異常、末梢神経伝導速度および末梢神経伝導速度分布異常(伝導が速い神経線維の障害)が見出された。これより、アルコールによる末梢および自律神経障害が明らかとなった。 今回の研究で得られた研究成果は、添付の研究成果報告書にまとめれたと共に、原著論文、口頭発表および出版物により発表された。
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