昨年度の研究にて自記式質問紙調査を行った東海地方S県にある有料老人ホーム入所者の中より自発的な被験者を選び、生体リズムの自己測定を行うとともに、その被験者の居住する居室の環境測定を行った。生体リズムの自己測定は口腔温、握力、眠気度、注意力、疲労度、心拍数等について、14日間にわたり実施し、同時に正確な生活時間記録を行った。心拍数については連続心拍数記録装置を用いて、1分おきに、48時間の記録を行い、コサイナ-法によりリズム特性を求めた。また、要介護老人(クモ膜下出血回復期患者)を対象に体温、心拍数、血圧の長期間測定を行い、それらのリズム特性を求めた。その結果、自立高齢者の生体リズムは、注意力などの主観的リズム変数において内的脱同調をきたす頻度が若年者より高い傾向を認めた。また、心拍数のリズム振幅を見ると、高齢者の身体活動度が高いものほど、振幅の大きいことが認められ、心拍数リズム振幅は生体リズム同調の客観的指標として有用であることが明かとなった。結論として、高齢者の生体リズムは体温などのリズムの同調は保たれているが、注意力などの主観的リズム変数が内的脱同調を示しやすいこと、心拍数リズム振幅は高齢者の身体活動度の強さを反映し高齢者の生体リズム同調の度合いを評価するのに役立つ指標であることが明かとなった。
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