高齢者の骨折の最大の危険因子は骨塩量であるが知られているが、同じ骨塩量であっても、高齢になるほど骨折の頻度は高くなることが知られている。そこで、年齢とともに低下する身体機能、特に平衡機能の低下が転倒の頻度を高め、その結果骨折が生じると仮説を立て、本研究を行った。 島根県K町の住民825名の重心動揺距離を測定し、年齢との関係を見た。その結果、重心動揺距離、面積ともに年齢とともに増加することが明らかとなった。また、高齢になるにつれ、重心動揺距離、面積ともに分散が大きくなり、平衡機能の極端に低下する群が存在することが示唆された。 ついで、島根県I町の農協組合員278名を対象として、重心動揺と転倒の頻度を調査した。1年間の観察期間中、転倒した者はしなかった者に比較し、有意に重心動揺距離が大きかった。また、転倒した者が全体の約20%を占めていた。 鳥取県A町の住民188名を対象に、身体機能(平衡機能、筋力、瞬発力など)と年齢との関係を見た。その結果、男女ともに、上腕三頭筋筋力、機能的リーチ(平衡機能の指標)、握力、大腿四頭筋筋力、歩行速度、視力が年齢と有意に関連していた。男女別に、年齢を目的変数、各身体機能を示す指標を説明変数として、重回帰分析を行った結果、男性では握力が、女性では握力、歩行速度、視力が年齢と関連していた。いずれも測定が簡便な検査であるので、加齢の生理的な指標として有用と考えられる。さらに、身体機能が転倒と関連しているかどうかを知るために、転倒頻度調査を実施した。現在結果を回収中である。
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