老人訪問看護事業に関する意識調査を、広島県医師会に所属する診療所開業医2351名に対して実施し、有効回答1557(66.2%)を得た。老人訪問看護の対象者数の平均は3.1名、標準偏差9.0であった。知識では、本事業の存在を知っていたのは60.2%名前だけ知っていたのは33.7%で、指示書が必要なことを知っていたのは57.2%で、指示点数について知っていたのは38.1%であった。関心では、関心あり71.6%、関心なし26.9%であった。参加意志は、参加意志あり66.8%、参加意志なし2.4%、わからない29.0%であった。利用行動では、老人訪問看護ステーションの利用経験あり9.9%、利用経験なし89.5%であった。すなわち、診療所開業医はステーションの利用経験はまだ1割程度であるが、7割程度の者がある程度の知識をもち、関心があり、参加しようという意志をもっていることがわかった。 数量化理論第2類を用いて意識構造について検討した結果、「既存の老人訪問看護ステーションの有無→知識→関心→参加意志」という構造が認められ、知識を高めるのにもっとも寄与していたのは医師会立のステーションの存在であった。また利用行動発現に関心や参加意志は直接的な影響を与えておらず、既存のステーションの有無の影響が強く、特に医師会立のステーションの存在が利用行動に対して直接的な影響を与えていると判断された。利用の経緯をみても、医師会立ステーションのある医師会所属の場合、70%が「医師の側から」ステーションの利用を希望しているが、その他の医師会では「患者の側から」という利用のしかたが多かった。すなわち、他のステーションに比べ医師会立のステーションに対する医師の信頼は高いことがわかった。また医師会立のステーションを希望する者には、看護婦に対して主治医の治療方針を遵守する姿勢を要求する傾向が強かった。
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