1.昨年に引き続き、中高年期に適度な身体運動を続けることが加齢に伴う免疫能、特にT細胞系機能にどのような影響を及ぼすのかを断面調査により調べた。 2.対象は、昨年と同じ過去平均17年間のランニングやジョギング歴のある60歳代男性17名とその地域対照者19名および20歳代男性16名の3群である。早朝空腹時に末梢血液を採取し、免疫学的検査に供した。また、全員に最大酸素摂取量の測定を、60歳代の対象者2群には2日間の栄養摂取状況調査も実施した。 3.3群において喫煙状況に差がみられたため、全ての結果は喫煙状況別に検討した。 4.加齢による末梢血免疫パラメーターの変化として、CD8+細胞数を主体とするCD3+細胞数の低下、CD4/CD8比の増加傾向、活性化T細胞割合と感作CD4+、CD8+細胞割合の増加、PHAおよびPWM刺激リンパ球増殖反応と同種リンパ球混合培養反応の低下、IL-2産生能の低下傾向が認められた。しかし、NK細胞活性やIL-1β、IFN-γ、IL-4産生能は維持されていた。 5.継続した運動の影響として、加齢に伴って低下していたPHAおよびPWM刺激リンパ球増殖反応が比較的高く維持されており、IL-2、IFN-γおよびIL-4産生能が有意に高まっていた。 6.喫煙習慣は、CD16+細胞を除く全てのリンパ球サブセット数の増加やIL-1β産生能の低下をもたらしていた。 7.60歳代2群の栄養摂取状況には大きな差異はなかった。 8.以上の結果から、中高年期にランニングを中心とした身体運動を維持することにより、加齢に伴うT細胞系免疫能の低下が一定程度抑制されることが示唆された。
|