研究概要 |
本研究は、加齢にともなって中枢神経系の代償的な機能が低下すると考えられている中高年の人々が、許容濃度付近の比較的低濃度の有機溶剤に反復暴露された場合に、青年期の人々が暴露を受けた場合の影響と比較して中枢神経系の機能的障害を生じ易いのではないかと云う仮説を、トルエン暴露の場合について、若齢と老齢ラットを用いて実験的に量-反応関係を検討することを目的としている。 〈効果〉 1.初老期暴露群(21カ月齢から12週間暴露) (1)行動学的テストバッテリー: 100ppm、400ppm、1,000ppm暴露群について、最終暴露打ち切り後16日目(25カ月齢)から学習行動を観察したが、いずれの暴露群も対照群に比べてDRL12 secの“時間どり行動"の習得が遅れ、1,000ppm暴露群は最後まで追いつくことが出来なかった。 (2)in vivo脳マイクロダイアリシス: 海馬アセチルコリン系に100ppm、1,000ppmの暴露群に量-反応関係の明瞭な慢性的影響が検出された。 2.青年期暴露群(19週齢から12週間暴露) (1)行動学的テストバッテリー: 100ppm,400ppm,1,000ppm暴露群について、最終暴露打ち切り後16日目(33週齢)から実施したDRL12 secの習得過程において、暴露群の習得は対照群に比べてやや早いものの、暴露3群間に明瞭な、量-反応関係が認められず、暴露との因果関係が有るとは云い難い。TL1000ppm暴露群においても、老齢期暴露の場合とは異なり、習得の到達度に暴露影響は認められなかった。 以上の結果から、トルエン長期暴露による慢性影響の発現には、暴露された時期の年齢要因が関係することが示唆された。今後、青年期暴露群で、in vivo脳マイクロダイアリシスを実施し、仮説の検証を行う予定である。
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