本年度までの研究で、研究課題の全貌はほぼ明らかになったと考えられる。すなわち、肝障害を有するアルコール多飲者において1、組織学的に脂肪肝(FL)、肝線維症(HF)、アルコール性肝炎(ALH)では、HCVRNA陽性率は0〜8%と低いが、常習飲酒家の慢性肝炎(CH)、肝硬変(LC)、肝細胞癌(HCC)では54〜69%と高率であった。2、HCVRNA陰性群は陽性群に比し断酒後速やかに肝機能は改善した。3、組織学的検討(HAIsuore)においてHCVRNA陽性群はより高度な炎症所見を認めた。4、HCVgenotype分類ではCHからLC、HCCに進展するに伴い、2型の占める割合が増加し、またHCCでは全例2型であり、アルコールは2型の発癌に何らかの作用を及ぼしている可能性が示唆された。5、HCVRNA量は、病態の進展に伴い増加する傾向にあったが、断酒によっても減少しなかった。また若干主旨は異なるが、現在アルコール多飲歴を有するC型肝細胞癌患者の肝培養細胞を用い、HCVとの関係を検討中である。
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