肝障害を有するアルコール多飲者で、「アルコールと肝」研究班のアルコール性肝障害の診断基準(1986年)に合致した143例、(脂肪肝(FL)7例、肝線維症(HF)18例、アルコール性肝炎(ALH)24例、慢性肝炎(CH)39例、肝硬変(LC)42例、肝細胞癌(HCC)13例についてHCV感染状況を中心に検討した。その結果、1)HCV RNA陽性率はそれぞれ、0/7(0%)、1/18(6%)、2/24(8%)、27/39(69%)、24/42(57%)、7/13(54%)であり、CH、LCにおいて高率に認めた。2)臨床経過において、HCV RNA陰性群は、陽性群に比し断酒後肝機能は速やかに改善した。3)genotype分類では、CHからLC、HCCに進展するに伴い、2型の占める割合が増加し、またHCCでは全例2型であり、アルコールは2型の発癌に何らかの作用を及ぼしている可能性が示唆された。4)HCV RNA量は、病態の進展に伴い増加する傾向にあったが、12例の検討では、断酒によっても減少しなかった。以上、従来アルコール性肝障害と診断されていた症例にもHCVが高率に存在していたことが判明し、アルコール単独での病態進展は従来ほど多くはないと考えられた。今後、新たに発見されたG型肝炎ウイルスについても測定し、肝病変との関連を検討していきたい。
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