研究概要 |
酸性雨等により土壌中から重金属(カドミウム,水銀等)の溶出が増加する一方で,セレンなどの溶出は多くない。その結果として生態系における,これら元素間のバランスの変化が生じ,従来から知られているカドミウム等の環境汚染元素の生体影響も修飾されることが考えられる。本研究では生態等元素間バランスの変化のモデルとして,カドミウムとセレンをとりあげ,水溶性カドミウムの生態影響に及ぼすセレンの修飾作用を検討した。 平成5年度の研究業績は以下の通りである。 1.異なるセレン飼料(欠乏,正常,添加)を与え,一方でカドミウム50ppm,100ppmを含む飽れを60週与えたマウスの実験結果から以下の知見をえた。 1)カドミウムは肝臓に比べ腎臓に蓄積し、特にセレン欠乏餌群でカドミウム蓄積が高かった。また心臓へのカドミウム蓄積も高くなった。 2)解毒関連酵素であるグルタチオンS-トランスフェラーゼ活性がセレン欠乏群で有意に高値を示した。 すなわち,セレン欠乏条件下でのカドミウム暴露は,従来のカドミウムによる慢性生体影響及びカドミウム蓄積に影響し,生体への有害作用の発現を促進する。また心臓へのカドミウムの蓄積増加は循環器等へのカドミウムの慢性影響を考えるうえで興味ある知見である。
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