研究概要 |
平成5年度ではマウスにカドミウム(Cd)を含む飲水投与モデルによる実験を実施し、セレン(Se)摂取量の違い、特にSe欠乏によって、1)Cdの臓器蓄積が高まること、2)解毒関連の酵素活性が上昇すること、また、3)必須元素(Zn、Cu,Fe)の変動が認められること等の知見を得た。 平成6年度では、平成5年度の知見を基に更に詳細な知見を得るため、ラットを用いて実験を実施した。すなわち、異なるSe餌(欠乏、正常、添加)を与え、一方ではCdを経口投与用カニューレで定量投与し、Cdの生体影響に及ぼすSe摂取量の違いによる影響を尿、血液、臓器組織中の臨床生化学検査を行い検討した。 平成6年度の研究成果は以下のとおりである。 1)血液、肝臓、腎臓中のSe濃度はSe欠乏餌群で有意に低下した。 2)Se添加餌群の血中CdとSeの濃度はSe正常餌群や欠乏群に比して高値を示した。 3)肝機能障害(血中GOT,GPT活性の上昇)が認められないにも拘わらず、全実験群で肝臓よりも腎臓中に多のCdが蓄積した。また、心臓中へのCd蓄積はSe欠乏により上昇した。 4)解毒関連酵素GSTの活性はSe欠乏群で活性の上昇が認められた。 5)腎臓機能異常を反映する尿中酵素排泄の増加が、Se欠乏餌群で著明であった。 6)Se欠乏餌群の腎臓中のCd化学形態を調べたところ、Cdの解毒に関連する金属結合蛋白質メタロチオネイン(MT)に結合されないVdに割合が多かった。 7)血漿中銅濃度およびゼルロプラスミン活性の低下はSe添加により軽減された。 以上の結果から、Se欠乏下におけるCd摂取はCのd心臓蓄積を高めること。また、腎臓中の活性型Cd(非MT結合Cd)の存在割合を高め、腎臓機能異常の発現を助長する可能性のあることが考えられた。一方、Seの添加では血中でのCD-Se複合物質の形成によりCdの生体影響が軽減される傾向にあることが考えられた。Cdの低濃度暴露と循環器疾患との関連性が指摘されているが、疫学研究においてもCdのみならずSeの摂取状況も含め検討する必要性を示唆する研究成果を得た。
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