研究概要 |
本年度は,保存法・測定法の開発,測定の実際例,測定の意義等の検討を行なった。 1)尿中溶剤の保存法の研究 尿を凍結保存すると,凍結時に溶剤が揮発するので有効ではなく,尿をバイアル瓶に全部充填(満水)し,冷蔵保存する方法が有効な方法であることが認められた。さらにスクロデキストリンの添加により有機溶剤をこれにトラップ(抱接化合物を作ると考えられる)し,揮散を防ぐ方法を開発した。この方法では,尿の凍結保存もできた。 2)測定法の改善 【.encircled1.】測定器具として,新たに購入した自動ガスクロマトグラフ測定器の使用により,精度,確度の良い測定法を開発することができた。 【.encircled2.】測定対象溶剤と溶解度,蒸気圧が略等しくガスクロマトグラフの保持時間の異なる内部標準物質を添加すると測定誤差の減少することが認められた。 3)作業者の測定例 有機溶剤作業者の尿中溶剤による生物学的モニタリングの実例として,メチルイソブチルケトン含有溶剤に暴露した作業者の,メチルエイソブチルケトンの測定を行った結果,気中濃度ととの間に良い相関を示し,我々による単独溶剤の成績と比較的良い一致を示した。 4)混合溶剤暴露時の尿中溶剤測定の意義 尿中有機溶剤測定の利点の一つとして,混合溶剤の暴露,特にトリクロルエチレン,テトラクロルエチレン,メチルクロロフォルムの様に共通する代謝産物,トリクロロ酢酸,トリクロルエタノールを持つ溶剤の暴露量の推定に必要であることを述べた。
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